大阪近郊の、とある私鉄沿線の小住宅街。その中の一軒に住む河合雄吉と妻蝶子は結婚して十三年、子供は三人。雄吉は平凡なサラリーマンで、善良なだけがとりえという男である。蝶子は妹の春恵をたずねての帰途、新しい茶羽織を着た近所の小川夫人と出逢った。彼女は、一度あんな茶羽織を着てみたいと羨ましく思った。一方、雄吉は会社からの帰り道、足許に落ちていた財布を拾った。中を見ると千円札の束。雄吉と蝶子は猫ばばをきめたいところだったが、とどのつまりは警察へ届けた。ある日曜日、蝶子は子供たちの外出の支度にてんてこ舞いをしていたが、さて自分の身支度にかかると、またいつもの茶羽織。私も茶羽織の一枚ぐらい欲しいなあと愚痴を言ったことから喧嘩になり、蝶子は家を飛び出してしまった。彼女は悄然とある喫茶店に入った。そこには、主人と別れて来たばかりという近所の中原夫人がいた。主人が茶羽...
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